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ハーモニーの歴史12 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史11
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第12回: 究極のポリフォニー(ポリフォニー編3)
 
12_Das Wohltemperirte Clavier 
J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集
第1巻 第1番 ハ長調からフーガ
鍵盤1台で奏でる4声のフーガ
順番に現れる主題を彩る多彩なハーモニーがとても美しい

カノンはポリフォニー音楽のかなめであり、各声部がバラバラになりがちなポリフォーニーに統一感を持たせる為の重要な形式だと言えます。そして、ポリフォニーを象徴するもう一つの形式、そして究極のポリフォニーが「フーガ」です。

フーガは各声部が同一のメロディーを演奏する点では、カノンと近いものがあります。通常の形式では、まず最初の声部が単独でメロディーを演奏します。カノンと異なり、たいていの場合は、数小節の短いメロディーで完結します。そして、最初の声部のメロディーが終わると同時に、2番目の声部が同じメロディーの演奏を始めます。ただし、ここでキー(調)は、5度上等に移調されます。その間、最初の声部も休むことなく演奏しますが、メロディーは自由に動きます。アドリブ的に多彩なメロディーを演奏しながら2番目のメロディーにハーモニーをつけることになります。

同じように、3番目、4番目の声部が入ってきます(声部の数は、曲により2~6ぐらいまであります)。各声部は、順番に同じメロディーを演奏しますがそれぞれキーが異なり、また、他の声部が演奏しているときは、全く異なるメロディーを演奏することになります。そして、全部の声部が終わると間奏が入ります。間奏は、複雑なハーモニー処理で最初の調(キー)から大きく逸脱した演奏をもとの調に戻るために必要となります。編曲としては、カノンの手法を用いたり即興演奏となったり、多彩かつ高度なものが多く聞かれます。その後、また、いづれかの声部が最初のメロディーを演奏して2順目の演奏が始まります。何順するかは、曲によりいろいろです。

カノンとの一番の違いは、各声部のメロディーが重ならない為、今どこの声部がメロディーを演奏しているか聞き取りやすいことです。また、各声部が自由に動けるため作曲的にも演奏的にも高度なものが求められます。同一のメロディーを用いながら、毎回異なるハーモニーの処理や転調等が行なわれます。

ポリフォニーとして高度な技法であるフーガですが、バッハをピークとして急速に消滅していきます。その後はベートーベンで少し聴かれるぐらいです。曲の進行において形式が厳格であるがゆえに、古臭くなってしまったのかもしれません。ただし、各声部で同じメロディーを繰り替えすと言う最小限の決まり事の中で、無限のハーモニーを即興的な演奏の中で生み出すフーガの技法は、究極のハーモニーと言う事が出来ます。

フーガに限らずポリフォニー音楽は、バロック時代が全盛期で、バッハをもって完成し同時に終焉を迎えました。ただし、形式としては過去のものとなりましたが、現代のホモホニーのハーモニーにおいても、各部分を見ていくとこれらの要素がたくさん見うけられます。ポリフォニーの基礎があって始めて、ホモホニーが理解できると言えます。


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ハーモニーの歴史11 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
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第11回:みんなで重ねれば(ポリフォニー編2)
 
11_Musical offering No3 canon
J.S.バッハの音楽の捧げ物から逆行カノン
(原譜はソプラノ記号だがト音記号で記譜)
楽譜は1声だが実際は2声のカノン
最後にある逆さまになったト音記号がミソ
もう一人は楽譜を上下逆に読んで曲の最後から逆行して演奏する

前回は、コーラスなどの各声部の流れからコードでは説明できないハーモニーの多彩さを説明しました。例えば、コード進行で表現すれば単純なストリングスの演奏でも、実際にクラシック等で聞かれる演奏は多彩な響きを持っています。逆に、いくら綺麗なストリングスの音色を使っても、シンセサイザーの鍵盤でコードをなぞっていくだけでは、これらのまねはできません。そして、さらに各声部のメロディーを突き詰めていくとポリフォニーを避けて通れなくなります。

以前、説明したように、ポリフォニーは各声部が別々のメロディーを歌いかつ全体としてハーモニーとしての調和も取れた形式を言います。現代の音楽では完全なポリフォニーの曲を作ることはまれで、部分的な味付けとなる場合が多いでしょう。しかし、概念を説明するために、完全なポリフォニーの曲の形式を説明しましょう。

ポリフォニーの形式はたくさんあります。形式に捕らわれずに1曲を通して各声部がまったく違うメロディーを歌うことも出来ますが、それでは規則も何もなく説明しようありませんし、聴く立場からみても、それぞれのメロディーを聞き取る事は不可能です。そこで、もっとも一般的な「カノン」形式を説明しましょう。

カノンの基本は、同じメロディーを各声部がワンテンポずらして歌うことです。簡単な例では、「かえるの歌」はカノンそのものです。各声部が、何小節かづつずれて同じメロディーを歌い出すと、それがきれいなハーモニーになるように、あらかじめメロディーに細工がしてあるわけです。どの声部も主役でありながら相手にハーモニーをつけてあげるわけです。ソプラノが主役でそれ以外は脇役であるホモホニーとは異なり、主従関係のないハーモニーの世界です。

「かえるの歌」は単純な例ですが、実際にもっと複雑で長いメロディーになってくると、とたんに作曲が難しくなってきます。すべてが同じメロディーを歌っているわけですから、不協和音を除く為に一つの声部のメロディーを変えると、他のすべてのメロディーも変り、また別の箇所で不協和音が発生します。あちらを立てればこちらが立たずです。そこで、ある声部の一部だけメロディーを変えてしまって処理することも出来ますが、これは各声部に主従関係が生まれてしまいます。逆に、すべての声部が完全に同じメロディーとなっている曲は、「厳格」なカノンとされ、ある意味、数学的な精巧さがあります。そして、なによりすべての声部が主役で演奏が楽しい曲になります。

カノンには、さらに多くの種類があります。最初のメロディーをそのままなぞるのではなく、逆から演奏するもの(2番目の声部は、最初の声部のメロディーを楽譜の後ろから演奏する)、音程が逆になっているもの(音符を上下逆にする)、音程が異なるもの(音符を上下に平行移動)テンポが倍になったり半分になるものなどなどです。一見、遊びのような手法ですが、各声部の音程やテンポが異なるのでハーモニーも刻々と変り、作曲には高度なテクニックが求められます。これらの手法で「厳格」なカノンを作るのは至難の技でしょう。


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ハーモニーの歴史10 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史9
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第10回:コードにはないもの(ポリフォニー編1)
 
10_Suiten Ⅲ Air
J.S.バッハの管弦楽組曲から第3番のアリア
G線上のアリアとして有名
4つの異なるメロディーが重なり
コードでは表せない美しいハーモニーを作る

しばらくの間、話を簡略化するためにコードの話が続きました。今回は、基本に戻ってハーモニーのお話です。記号化できるコードと違って、ハーモニーそのものは、楽譜を見ながら音を聞かなければ理解が難しいものです。よって、文字で説明するとどうしても抽象的になってしまいますのでご了承下さい。

ハーモニーそのものには、各声部のメロディーの流れや、楽器(あるいは声)などの音質の対比、演奏上の表現、楽器の数など多くの要素が絡んでくる事を最初に説明しました。その中で、もっとも基本となるのは、各声部のメロディーの流れでしょう。

通常、ギターやピアノなどで一人でコードを弾くと、弾いている音はすべてコードの構成音です。大方の場合、それぞれのコードは、弦や鍵盤の押さえ方の「型」があり、それらを複数つなげていくことによって演奏が成り立ちます。よって、ある程度決まったパターンでの演奏となると同時に、そこにコードの構成音以外の不協和音は存在しません。それらのコードとコードのつながりは、コード進行としてのつながりはありますが、コードを構成しているそれぞれの音、つまり各声部の滑らかなつながりはありません。

逆に、コーラスや弦楽曲などでは、各声部(コーラスでは、ソプラノ、アルト、テノール、バスです)は、それぞれ独立したメロディーを歌っています。メインのメロディー(主旋律)は、一番上のパート(ソプラノ)ですが、他のパートもただコードの構成音のみを歌っているわけではなく、独自に滑らかなメロディーを歌っています。通常、聴衆には聞き取れないかもしれませんが、それらのメロディーは、ハーモニーを形作る上で重要な働きをします。そして、時にはメインのメロディーの隙間を縫って、新たなメロディーを聞かせて自己主張する場合もあります。

ここで重要なのは、各声部が主旋律と平行に動いているわけではなく、異なるメロディーを奏でていることです。例えば、主旋律の音程が上に行ったら他の声部は下へ行く、主旋律が音を伸ばしているところで他の声部は細かい動きで音程を変えるなどです。各声部間の音程とリズムの関係が常に動いているわけです。結果として、そこにはコード以外の多く音、つまり不協和音が入ってきます。コードと言う概念のみだと、「1小節の間ずっと同じコード」と考える場合も、ハーモニーとして考えると、「どこかの声部の音程が変る毎に細かくコードが変る」と考えます。これにより、単純にピアノやギターでコードをリズムにのせて演奏する場合と異なり、緊張感のある多彩な響きが生まれるわけです。

これらの不協和音は協和な音程の間に経過的に生まれるものです。通常、リズムの強拍では協和に、弱拍では不協和になるようにハーモニーをつけます。テンション・コードのように常に含まれるものではありません。逆に言うと、ハーモニーの協和、不協和の繰り返しによってリズムが形作られます。明確なリズム楽器を持たないオーケストラなどがダイナミックなリズムを奏でる事が出来る理由は、ハーモニーにもあるのです。


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ハーモニーの歴史9 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史8
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第9回:西洋へ持ちこまれたもの

09_Blues code
ブルースのコード進行
CやFが7thとなっていたり
G→Fの禁則の進行が使われている
このシンプルな12小節で多くの名曲が作られる

長い間反映してきた西洋のハーモニーの世界は、最少の音程(2度)にたどり着き終局を迎えました。その後のクラシックの世界では、現代音楽と名を変えて法則のない世界が続いています。また、我々が聞くポップス等は、クラシックに100年ぐらい遅れて同じ歴史の歩み(崩壊への歩み?)をたどっています。それらは、おおよそはクラシックのコピーの世界ですが、異なる面もあります。今回は、それらを説明しましょう。

現代の一般的なポップスでは、アメリカの黒人社会から発生したブルースとそれから発展したジャズ、ロックの影響が多大です。リズムが特に影響を受けましたが、ハーモニーの世界にもそれは言えます。ブルースのコードの一番大きな特色は、7thコードを多用すると言う事につきます。逆に、コードそのものは、スリー・コードと言われる三種類が主に使われます。それらは、クラシックの世界では、もっとも基本的な3つで、トニック、サブドミナント、ドミナントと言われるものです。キーをCとするとC7、F7、G7になります。

通常、これらの3つだけのコードを使って曲を作ると、童謡のようにシンプル(悪く言えばワンパターン)な響きになってしまいます。ただし、ブルースではコードがすべて7thになっているためにちょっと事情が異なります。7thに変化した音は、本来の長調のスケールから外れて短調のスケール音を付加します。さらに、それらの音は平均律から外れた微妙な音程で演奏されます。よって、曲調が長調でも短調でもないものになります。これらの音は、ブルー・ノートと呼ばれ、ブルースを決定付けるものなのです。

これらのブルー・ノートは、ブルースの憂鬱で重たい雰囲気を導き出したわけですが、ブルースがジャズ、ロックンロール、ハード・ロックなどなど変化して行くなかで、疾走感と重量感、都会的と泥臭ささなど、同じコードから相反するさまざまな雰囲気をも作り出していきます。そのすべてが、ブルースに根付いているがゆえに、旧来の西洋音楽のハーモニーとは異なる響きを作り出しているわけです。多彩な響きを得る為に複雑化していき、最後に飽和してしまった西洋のハーモニーと比較すると、ブルースは最少の理論で多彩なハーモニーを作り出します。これは、音楽以外においても西洋文明と(日本を含めた)それ以外を比較するときに、多く見られる対比でしょう。

また、ブルース以降、特にロックのハーモニーにおいては、クラシックの3度のハーモニーにおいて禁則となっているものが多く使われています。例えば、3度音を抜いたコード(パワー・コード)、ベースとトップノートのオクターブ平行進行(ベースとエレキのユニゾンのリフ)、ドミナントからサブドミナント(G→F)へのコード進行などです。これらは、ロックであっても時と場合によってはハーモニーを空虚にしてしまう危険がありますが、多くの場合はなくてはならない響きです。理論よりもセンス、そして自由なハーモニーこそがロックかもしれません。

現代までたどり着きましたが連載はまだ続きます。次からはテーマを絞って解説する予定です。

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ハーモニーの歴史8 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史7
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第8回:進化の果てに...

08_Pour les quartes
ドビュッシーの12のエチュードから
"4度音程のために"
とても日本的な響きで始まるイントロ
 
前回までの説明した3度の音の積み重ねにより、ハーモニーの世界は発展を続けました。具体的な使い方は、巷に溢れている現在の曲で聴けますし、本屋さんには理論書もたくさんあります。つまり、現在、ポップス等で聞かれるコードは、19世紀のヨーロッパで確立されたものとそれほど変りません。その間、本家のヨーロッパのクラシックは、現代音楽と言うものへ移行しました。ハーモニーの世界では、印象派の時代、ドビッシーがその幕開けとなります。

ドビッシーは、旧来のヨーロッパ音楽にない手法を用いた作曲家です。彼は、日本の芸術、特に浮世絵から大きな影響を受けています。そのせいか、彼の曲の中では日本の雅楽などで聴かれるハーモニーをアレンジにしたものが聞かれます。日本古来のハーモニーには、特に理論はありませんが、4度間隔のハーモニーが多いのが特徴です。彼は、それをいくつか重ねることにより、独特のハーモニーを作り出しました。4度のハーモニーをずらして2つ重ねることによって、結果的に2度のハーモニーが生まれました。例えば、「ド、レ、ミ、ファ#」などです。そう、彼は長らく続いた3度のハーモニーからさらに一歩進み、その先にある2度のハーモニーを発見したのです。彼は、全音音階(ホールトーン・スケール)と言うすべてが長2度の音階も多用しましたが、ここからも必然的に2度のハーモニーが生まれます。

過去の歴史をたどれば3度から2度への移行は必然です。しかし、それを美しい曲の中で実現するのは「天才」のなせる技です。倍音と言う後ろ盾がある3度のハーモニーと異なり、2度のハーモニーはコードそのものは不協和なものばかりです。それらを綺麗に聞かせるのは、コードのみでは説明できない各声部の流れなどのアレンジの力によるところが大きいでしょう。

ただし、その後2度のハーモニーが反映を極めたとは言えません。少なくとも我々が普段聴く曲には見当たりません。そして、クラシックの世界でもすぐに次のステップへ行ってしまいました。2度の次に狭い音程は1度、つまりそれは、ハーモニーのない振り出しに戻ってしまいます。次のステップはない訳です。

現代音楽では決まった理論や規則はありません。あるのは作曲者のみが知る各個人の手法です。3度の積み重ねによる旧来のハーモニーに限らず個人が良しと思えばどのようなハーモニーを使っても良いのです。これは、大きな自由を得ると同時に混沌にも通じます。結局、徐々に音程を狭くすることによって進化してきたハーモニーの歴史は、飽和点を迎えて無秩序な世界になってしまったのです。

もっとも、そのような無秩序な世界が一般のポップスなどに反映されるのは、さらに何十年も後の話でしょう。過去の歴史を見ればい世間一般への普及までの時差は大きいのです。果たして未来の音楽はどうなるでしょうか?


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ハーモニーの歴史7 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

 前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史6
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第7回:積み重ねれば...

07_Tension code
上段:ドミナント・モーション
すべてのコード進行の基本
下段:テンション・コード
不協和に近いが上手に使えばお洒落に

前回は、3度の音の積み重ねによるハーモニーと倍音の関係、現在、使われている平均律に基づいた音階は実際には綺麗に響かないことを説明しました。結局は、あらゆるキーを演奏できて自由な転調を手に入れることの代償として、ハーモニーの美しさは犠牲になりました。だだし、転調をはじめとする自由なコード進行は、この後のハーモニーの発展の基幹となるわけで、あながち悪いことばかりではありません。バロック中期に平均律を手に入れた西洋音楽は、ここで、一気に進化を加速させます。

「フラットしたシ」の音を加えた4音のハーモニーに話を戻しましょう。3音のハーモニーで4種類の響きを手に入れたように、4音では、さらに多彩な響きを手に入れることが出来ます。短3度と長3度の順列組み合わせでたくさんの種類があります。実際には似たようなものを同類として「コードの機能」により分類をするのですが、大変煩雑なのでここではその説明はやめておきましょう。

「フラットしたシ」を加えたコードは、7thコードと言われ、この後のコード進行の発展の中心的な役割を担うことになります。それは、7thコードが「ド、ミ、ソ」のみのハーモニーよりも響きが不安定だからです。7thコードは響きが落ち着かないために長くは持続できません。よって、他の落ち着いたコードへ進みたくなります。これが、コードを次々と変えていく(コードを進行させる)原動力となります。特に、ドミナント7thと呼ばれる「ソ、シ、レ、ファ」の7thコードは、「ド、ミ、ソ」の安定したコードへ進む力が強く、この動きがすべてのコード進行の土台となります。これは、「ドミナント・モーション」と言われ、何百とある多彩なコード進行の多くは、この変形と言えるでしょう。逆に、コード進行の分析とは、いろいろ理由をつけて「ドミナント・モーション」へ解釈をつなげることとも言えます。

「フラットしたシ」を加えて4音のハーモニーを得ましたが、同じ考えでさらに3度上の音を加えていくことが出来ます。9thの「1オクターブ上のレ」、11thの「1オクターブ上のファ」、13thの「1オクターブ上のラ」です。もう一つ上の3度は、「2オクターブ上のド」になり、転回を考えるとハーモニーとしては意味がありません。つまり、3度の音の積み重ねは、13thで打ち止めとなります。数が限られるとは言え、7thコードと同様に(それぞれの3度間の音程差により)たくさんの種類が現れます。しかし、どれもコード進行の機能としては、7thコードの延長と考えて良いでしょう。これらは「テンション・コード」と言われ、転調とともに3度のハーモニーを発展させる原動力となります。

「テンション・コード」は、ハーモニーに彩りを与えます。ただし、「ド、ミ、ソ」のハーモニーと比較すると不安定で、不協和音に近いものです。すでに、13thは、ベートーベンの時代から使われていますが、多くの人がこれらの響きを「美しい」と思うようになるのはもう100年ぐらい後、印象派の時代です。さらに、大衆音楽(今で言えばポップス)で日常的に使われるようになるのは、さらに100年後ですね(つまり最近)。偉大な作曲家は、時代をどんどん進みますが、世間一般の耳が慣れるのには時間がかかります。

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ハーモニーの歴史6 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

 前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史5
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第6回:響きの悪い音階は便利?

06_Tetrad
シの音を加えた4和音
シを半音下げた方が響きが良い
でも、綺麗な響きとは言えない?

3度のハーモニーを得てヨーロッパ音楽が花開きました。その多彩なハーモニーは、現代に受け継がれています。そして、さらに次のステップへ進みます。ただし、3度の次に狭い音程である2度へ進むのは、しばらく後です。3度のハーモニーは、今までのハーモニーとは異なり、音程を上に重ねていくことで進化をとげます。

前回、3度のハーモニーは、「ド、ミ、ソ」のように3音でハーモニーを作ることが出来ることを述べました。これを発展させると、さらに3度上に音を重ねていくことが考えられます。「ソ」の3度上の音は「シ」です。ただし、「シ」の音を重ねるとあまり良い響きがしません。使用する楽器の音色にもよりますが、若干にごったうつろいのある響きとなります。では、どうやって綺麗な響きを得るのでしょうか? 実際の演奏では、「シ」の音を半音下げてフラットになります。「シ」のひとつ下の黒鍵です。これで綺麗に響くでしょうか? 答えはYESともNOとも言えます。

3度の音を積み重ねていくことの理論的な説明は、「倍音」と言うものでなされます。「倍音」とは何でしょう。今、仮に何かの楽器で「ド」の音を1音だけ弾いたとします。この音は、音程、つまりある一定の音の周波数を持っています(例えば「ラ」の音はおよそ440Hzと決まっています)。ただし、電気的に合成したサイン波でない限り他の周波数の音も同時に出ます。ちょっと難しくなりますが、雑音でなく音程の取れた音の場合は、整数倍の周波数を持った音が多く含まれます。例えば、「ド」に対して2倍の音は1オクターブ上の「ド」、3倍の音は1オクターブ上の「ソ」となります。これをどんどん上に行くと、「ミ」や「フラットしたシ」が出てきます。これらの音が倍音です。つまり、3度の積み重ねによるハーモニーとは、自然に発生している倍音を強調したものとも言えます。

ところが、話は簡単ではありません。今日、われわれが使っている平均律と言う音階は、倍音から出てくる「ミ」や「ソ」や「フラットしたシ」とは微妙に音程が違います。よって綺麗に響きません。倍音に近い響きを得るためには、純正調などの古典的な音階を使わなければなりません。しかし、それらの音階は、特定のキー(調)では綺麗に響くものの、他のキーではより外れた音となり響きが悪くなります。よって、ピアノなどでは曲ごとにチューニングを変える必要があり実用的ではありません。その前に、曲の途中で転調があったら演奏できなくなってしまいます。

これらのずれはどの音程にもありますが、「シ」の音では顕著です。綺麗に響くのは「フラットしたシ」より僅かに高い音程です。よって、ピアノなどでは、「シ」にしても「フラットしたシ」にしてもさほど綺麗なハーモニーは得られないのです。

以上のことは、音程を自由に変えられる歌やバイオリンなどの楽器には当てはまりません。それらは平均律以外の中間の音を自由に出せるので、実際のアンサンブルでは、(熟練した演奏者の技によって)臨機応変に響く音を出しています。ロックでもギターなどはチョーキングと言う技で対応しています。多くの場合、オーケストラを始めとするアンサンブルに鍵盤楽器などの音程が固定された楽器が含まれないのはこのためです。


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ハーモニーの歴史5 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

 前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史4
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第5回:やっぱりド、ミ、ソ

05_Triad
上段:4種類の3和音
すべてのハーモニーの基本
下段:ドレミ~の音階につけた3和音
ダイアトニック・コードと呼ばれる基本的なコードです

ルネッサンス時代になり5度のハーモニーから3度のハーモニーへ移行が始まりました。3度のハーモニーは、いわゆる「ド、ミ、ソ」と言われる現代で普通に使われているハーモニーです。それまで不協和音と考えられていた3度のハーモニーが、長い年月を経て一般大衆の耳に慣れてきたと言えるでしょう。ちなみに、3度(転回すると6度)は、5度の次に狭い音程で、ハーモニーの歴史はまたワンステップ進んだわけです。

3度のハーモニーには、今までにない特徴があります。それは、「ド、ミ、ソ」のように3和音と呼ばれるハーモニーを作る事が出来る事です。「ド」と「ミ」、「ミ」と「ソ」がお互いに3度であり、同時に「ド」と「ソ」が5度になり3音が共存します。ただし、3和音が確立すると「ミ」を除いた5度のみのハーモニーは禁則となります。また、過去のハーモニーが追いやられたわけです。

さらに、4種類のハーモニーがあるので多彩な響きを作ることが出来るのも特徴です。例えば、「ド、ミ、ソ」と「ラ、シ、ド」では、響きが異なります。前者は明るく響き、後者は暗く響きます。これらは、3つの音の間に出来る2つの間隔の長短によって次のように分類します。

 長3度-短3度 メジャー(明るい響き)
 短3度-長3度 マイナー(暗い響き)
 短3度-短3度 ディミニッシュ(さらに暗い響き)
 長3度-長3度 オーギュメント(無機質な響き)

ピアノで言うと、長3度は黒鍵を入れて4つ上、短3度は3つ上になります。曲の中でメジャーやマイナー・コードは広く使われます。ディミニッシュは、「シ、ド、レ」の上にのみに現れます。その響きは陰鬱ですが、転調等のきっかけを作りやすく、使いこなせば多彩なコード進行を生み出す事が出来ます。オーギュメントは、シャープやフラットの臨時記号が出てこないと現れません。使い方もかなり限定されるので、多用されるようになるのは歴史的にもっと後になります。

コードの分類はかなり難しい話になりますが3度のハーモニーは、4種類の組み合わせで複雑で美しいハーモニーを生み出します。また、3音の使用が許される事により、「ソプラノ、アルト、テノール、バス」の4和声の形態が生まれます(1音足りないので同じ音がオクターブ違いなどで重複されます)。4和声でハーモニーを作る事は、弦楽器や管楽器も含め、その後のアレンジの基本となります。

3度のハーモニーを手に入れた西洋音楽は、それを武器としてバロック時代に爆発的な発展を始める事になります。


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ハーモニーの歴史4 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

 前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史3
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第4回:音程を狭めよう!

04_5th harmony
ドレミファ~上につけた5度のハーモニー
シだけ音程が音程が異なる
欧州の中世で生まれたハーモニー

男女の音域差から自然と1オクターブ(8度)のハーモニーが生まれました。多分、原始時代から続いていたであろうこの単純なハーモニーが、中世のヨーロッパで変化が現れます。8度よりも狭い音程でハーモニーを作るようになり始めました。

8度の次に狭い音程とは何でしょう。7度(ドとシの関係)だと転回すると2度になるので一番狭くなってしまいます。こう考えると、8度の次に狭い音程は、5度(ドとソの関係)です。転回すると4度です。中世ヨーロッパの教会音楽では、8度に取って代わって5度音程のハーモニーが採用され始めました。

しかし、現在のハーモニーと比べると実にシンプルで調性感も気薄です。つまり、どのキーで歌っているか分かりづらく浮遊間のあるハーモニーです。この調性間の少なさは簡単に説明出来ます。ドとソ、レとラ、ミとファと言うように5度のハーモニーを作っていくと、シとレ以外はどの音程も同じ間隔になります。ピアノで言えば、白鍵と黒鍵を合わせて数えて常に7個上の音になります(つまり、7半音上)。よって、メロディーにシの音が出てくるまで、ハーモニーはすべて同じ響きがするわけです。つまり、「コード」としては、シにつくコードとそれ以外の2種類しかないわけです。しかし、1オクターブ(8度)のハーモニーでは、コードは1種類しかなかったわけですから、2倍になったとは言えます。わずかながら多彩なコードを作る為の第一歩です。

この5度のハーモニーが確立されると、今まであった8度(オクターブ)のハーモニーは、「禁則」となります。5度のハーモニーの中に、8度が混ざるとあまりにも響きが単純で聞きづらく感じるようなるからです。このように、ハーモニーの歴史では、新しい響きが認知されると、過去のハーモニーは単純すぎて否定される場合が多々あります。ちなみに、現在でもハーモニーの一番上と下(メロディーとベースなど)がオクターブで同じメロディーを平行移動するのは「禁則」です。

同じように、新しいハーモニーとは、それ以前は不協和音であったものです。つまり、不協和音であるハーモニーが長い年月を経て多くの人が聴きなれるうちに、美しい響きと認識されるようになっていくのです。そして、今までのハーモニーは古臭くなっていきます。この歴史を考えると、不協和音か美しい響きであるかは、大衆の「耳の慣れ」の問題ともいえます。そんな訳で和音の理論は、理論と言うわりには例外が多く、分かりづらいのです。

そして、5度のハーモニーの後に長い年月をかけて3度(展開すると6度)のハーモニーに移行します。例えば、ド、ミ、ソのように、現在一般的なハーモニーです。ここまで来て、ハーモニーの世界は急激に開花します。

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ハーモニーの歴史3 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
 前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史2
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1
 
第3回:何オクターブ離れていても...

03_Interval
上段:音程の数え方
ユニゾンは1度、1オクターブは8度
下段:転回の例
ドが転回してド、ミ、ソがミ、ソ、ドへ
 
ポリフォニー形式の中で、試行錯誤を重ねながらハーモニーの理論が徐々に形作られていきました。今回はその初期の過程を説明しましょう。これからしばらくは話を単純にするために、ハーモニーではなくコードの話になります。まずは「転回」という概念の説明から始めます。

通常、曲は複数のコードを並べて作られます。曲の進行とともにコードとコードをつないで行くわけですが、この並び方には規則があります。これをコード進行と言って、その規則性を探ることがすなわちハーモニーの理論の初歩な訳です。ここで「転回」は、コードを構成する各音をオクターブ(1オクターブでも2オクターブでもいくらでも自由)上下に動かしてもコード進行における機能は変わらないと言う原則です。例えば、ソプラノの歌を2オクターブ低くしてバスの人が歌い、逆にバスのメロディーをソプラノ人が歌う、と言う事をすると曲は別物になりますが、コードは同じとみなします。

「転回」の概念は、中世のヨーロッパで発見され、その後のハーモニーの理論化の足がかりになります。「転回」により響きは変りますが、コードの役割は変わらずコード進行を分析する上では同一と考えます。これでギターで弾いてもフル・オーケストラで演奏しても「同じコード」になり、コード進行の理論がかなり楽になります。

クラシックでは「転回」によるコードの違いを厳密に別物として扱いますが、ロック、ポップス系では、気にしない場合がほとんどです。しかし、バラードなどでストリングスなどを厚く入れていく場合には、クラシック同様に「転回」の違いも重要になってきます。しかし、ここでは話を簡単にするために、当面は無視して説明しましょう。

では、ハーモニーの話です。ハーモニーのない音楽は、すべての人が同じ音程(ユニゾン)で歌う単純なものです。音程差は「1度」と言います(ゼロと表記しない事に注意)。しかし、男女には音域の違いがあり、普通に歌うと男性は女性の1オクターブ下になります。この自然な音程差がハーモニーの始まりになります。音程差は「8度」です(ド、レ、ミ・・・と数えていって8個目)。ここで、転回を考えると「1度」と「8度」どは同じ物です。同様に、何オクターブ上下しても同じです。よって、コードの中の構成音の音程差は、最大の「8度(オクターブ)」と最小の「1度(ユニゾン)」が同じ物となります。

こうして、ハーモニーは、最大かつ最小の音程差の「1度」と「8度」から始まります。ここから、何世紀もかけて異なる音程差を求めて変化して行きます。


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