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宅録史3:何度でもやり直せ [連載読み物]

自宅録音の黎明期を語る自分史の続きです。

 前回のお話はこちら → 宅録史2:ドラムの法則をさがせ
 1回目のお話はこちら → 宅録史:序章

何とかドラム・パターンを習得して本格的に曲を作り始めました。しかし、ウォークマンを使った録音は限界に来ていました。今までの曲は1~2分でしたが、それでも途方もない回数をやり直して弾いてました。普通の長さの曲を作ろうとしたら4~5分間、間違えずに弾かなければなりませんが、ギター2年目では不可能な事でした。

雑誌の知識で、プロはマルチ・トラック・レコーダー(MTR)と言うものを使っていて、それを使うと楽器毎にバラバラに何度でも録音をやり直せて、しかも、間違えたら部分的に録音し直すことが出来る事を知りました。ミスってもやり直しが利くことに「プロはずるいことをしている」と思いつつ、これは是が非でも手に入れなければならないと思ってました。

そうこうしているうちに、TASCAM(=TEAC)からPARTA ONEというMTRが出ました。TASCAMは、少し前からアマチュア向けの廉価なMTRを出し始めてましたが、一気に半額以下の製品を世に出したのです。バイトで稼いだ10万円を握りしめて、またしても新宿へ向かいました。しかし、当時の少ない情報ではMTRの仕組みは分からず、実物を前にして「一体これは何なんだろう?」とさんざん迷いました。最後は、音の良いカセット・デッキだと自分に言い聞かせて買いました。本当に何なのか理解せずに10万円を払いました。

宅録史_03

PARTA ONEは4トラックのカセット・レコーダーと4チャンネルの簡単なミキサーが一体になった物です。テープへの録音は、新しく録音すれば前の音は消えるのが普通ですが、MTRは前に録った音を消さずに、それ聞きながら別のトラックへ新たに録音できます。こんな事を理解するのに何日もかかりました。また、ミキサーという概念もよく分からず、音を出すのも一苦労でした。しかし、努力の甲斐あって、ミスった演奏の録り直しや各楽器のバランス(音量)をとったミックスダウンが出来るようになりました。

そして、4トラックを使って下記の編成で曲を作り始めました。

◇ドラム 前回、買った物。モノラルで録音する
◇ベース ベースは持ってなかったので、ギターにベースの弦を2本張って弾いた
◇サイド・ギター ギター用のペダル・エフェクターをかけて録音
◇メロディー サイド・ギターと同じです

ギターはエフェクターから直接ケーブルでミキサーへ入力しました。アンプシミュレーターなどない時代なのでかなりチープな音色ですが、安物のマイクを使わなくなったので音質は格段に向上しました。

こんな感じで曲作りを再開しました。曲の途中からやり直しがきくとは言え、成功するまで何度でも録音をやり直すことには変わりなく、結果として途方もないギターの練習にもなりました。

 今回の機材:TASCAM PARTA ONE

 今回の一言:録音機材は不可能を可能にするが、下手な演奏が上手にはならない。

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宅録史2:ドラムの法則をさがせ [連載読み物]

自宅録音の黎明期を語る自分史の続きです。

 前回のお話はこちら → 宅録史1:家であるもので曲を録音しろ
 1回目のお話はこちら → 宅録史:序章

ギターを重ねて作曲をすることはすぐに壁に突き当たりました。なぜかと言うと、はやりロックやポップスが作りたいのでドラムがないと形になりません。雑誌でドラムの音が出せてプログラミング(打ち込み)すれば自動演奏してくれるドラムマシンと言うものがある事を知りましたが、まだ何十万円もした時代。自分には関係ないものと思ってました。ところが、KORGから4万ぐらいで新製品が出ました。ろくに調べもせずに、新宿のイシバシ楽器まで買いに行きました。これが録音機材の第1号です。

宅録史_02

当時もリズム・ボックスと言う物(チャカポコと電子音が鳴る)はあったので、訳が分からないながらも、ドラムマシンは「本物のドラムの音がなるリズム・ボックス」であろう事は想像できました。しかし、家に着いて鳴らしてみると、、、やっぱり値段相当でした。レコードで聞けるドラムの音とは異なりとてもショボイ音でした。そして、16分音符より細かい音を入れられない、音量が一定で強弱がつけられない、10個しかタイコの種類がない、当然MIDIなんかない、と言う機材で、今なら、「これでどうやって曲を作るの?」と言った機材でした。

しかし、もっと問題だったのは自分がドラムのことを知らなかったのです。当時は、バンドをやったこともなく、本物のドラムの音を聞いた事はおろか、見たこともなかったのです。プロのライブでは見てますが、武道館のような大きな会場が多かったので詳細は分かりません。「バスドラって何?、スネア? ハイハット? タム?」と言う状態でした。

そこで、片っ端からレコードを聴いて、とにかく「どの音がどこで使われるのか?」と言う法則を探りました。そして、自分のドラムマシンの音色を曲のどこで使えば良いかを把握していきました。レコードでは聞こえるけど自分のドラムマシンにはない音というのも一杯ありましたが、それはどれを代用すれば良いかを考えていきました。そして、苦節数ヶ月、単純な8ビートですがドラム・パターンと言うものを習得しました。

その後、本物のドラムを叩いているのを体験するのは4年も後です。その時、自分がやってきたドラムパターンが間違っていなかった事と、本当に人間が叩けるのだと言うことに感動しました。

 今回の機材:KORG DDM-110

 今回の一言:音楽は耳で聞いて覚えれば間違うことはない

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宅録史1:家であるもので曲を録音しろ [連載読み物]

自宅録音の黎明期を語る自分史。前回は序章でしたが、今回からお話がスタートです。

 1回目のお話はこちら → 宅録史:序章

高校卒業後にエレキを買い、まだまだ初心者ながらも2年目ぐらいからオリジナル曲の音源化(当時はカセットテープ)のチャレンジを始めました。演奏も作曲も完全に初心者でしたが、エレキの練習と同時進行で録音も始めました。

本当は歌物が作りたかったのですが、自分は歌が下手なので、まずはエレキを使ったインスト曲からスタートしました。しかし、前回、書いたように録音機材が買える時代ではなく、また今のように情報もなくプロがどのように録音しているかも分かりませんでした。完全な素人です。

作曲と言っても、プロのような完成度は無理だとは分かっていたので、伴奏にメロディーを重ねれば良しとしました。ただし、両方共にギターで弾くとしたら、2人で合わせて同時に弾くか、1人で2回録音して重ねなければなりません(多重録音と言います)。まだ、ギターの初心者だったので、上手な友達に頼んでも合わせて弾くのは無理なので自分一人でやることにしました。

まずは、身の回りにある物で何とかならないか考えて、次の物が出てきました。いずれも安物です。

◇エレキギター
 持っている楽器はこれだけです。今だにメイン使っているストラトです。
◇ギターアンプ
 リバーブとかは何も付いていない小型のトランジスタ・アンプです。
◇オーディオ・セット
 音楽を聴くのが趣味だったので、中学生の頃に親に買ってもらいました。レコードプレーヤー、ラジオ、カセットデッキ、アンプ、スピーカーのセットです。ここでは、レコードプレーヤー以外をすべて使います。
◇ウォークマン
 再生専用のカセットプレイヤーです。片道2時間の電車通学なので必需品でした。
◇ワイヤレスマイク 
   小学生の頃、アニメの主題歌をTVから録音するために親に買ってもらいました。

これで多重録音が可能になったのはマイクに秘密があります。この安物マイクは、出力をケーブルでもFM電波でも出せるようになってました。そして、本来は出力用のプラグに音を入れると、同時に録っている音とミックスされて、FM電波に飛ぶようになってました。多重録音の肝であるミキサーの代わりになるのです。録音は次のようにやります。

1.ギターアンプの前にマイクを立てて、オーディオ・セットのカセット・デッキで伴奏を録音する。
2.録音したテープをウォークマンへ入れる。ウォークマンの出力はケーブルでマイクへ接続。
3.FMラジオを録音出来るようにして、新しいテープでカセット・デッキを録音スタート。
4.ウォークマンで伴奏を再生スタート。伴奏を聞きながらメロディーを弾く。
5.伴奏とメロディーが混ざったものがカセット・デッキに録音される。

宅録史_01

これをもう一回繰り返して、伴奏、ベース的な低音、メロディーの3パートを重ねることが多かったです。しかし、気が遠くなるような努力を必要としました。何故かというと・・・

・演奏の途中で止められない。毎回、絶対に間違わないで全部弾かなければならない。
・メトロノームもクリックも使えないのでタイミングが取れない。途中にリズムのはっきりしない伴奏や長い休符があるとタイミングをミスる。
・機材が機材なので雑音がひどい。3回目には雑音に埋もれて何だかわからなくなる。
・重ねる音のバランスはギターアンプの音量で合わせるしかない。試行錯誤でやってみないとバランスが決まらない。

などなど。いずれにしてもエレキギターを買って1年ちょっとでは「間違えずに弾く」ことが困難なので、数十回録音してまぐれで出来るのを待つしかありませんでした。

この録音方法で途方もない労力をかけ10曲が完成しました。しかし、これで出来ることは知れてます。今聞くと「ただコードを弾いているだけ。本当に曲か?」と思います。しかしながら、努力の甲斐もあり作曲の技量は上がっていきました。この方法で最後に作った曲は、後日、アレンジし直して1stアルバムに入れた"Seaside of Twilight"です。

 今回の機材:オーディオ・セット、ウォークマン、ワイヤレスマイク

 今回の一言:機材がなくても曲は作れる

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宅録史:序章 [連載読み物]

今回から新連載です。自分は昔々から作曲した曲をテープやCD等の音源に仕上げる作業をしています。いわゆる自宅録音(通称:宅録)です。今ではPCと録音用のアプリが一つあればすべてが簡単に出来てしまいますが、当時、そこに辿り着くまでは苦難の歴史でした。おじさんの昔話になってしまいますが、その初期の歴史を書いてみます。今回は、今とはあまりにも違う当時(1980年代初頭)の時代背景です。

宅録史_序章

以前も書きましたが、高校生の時に作曲をしたいと思い、受験が終わった春休みにエレキを買いました。今なら曲を作りたかったら、まずはPCを買って録音用のアプリの習得になると思いますが、当時はPCどころか打ち込みもない時代なので、曲を作るためには何年もかけて楽器を習得するしか道はなかったのです。作曲をするためにはギターより鍵盤の方が良いのは分かってましたが、まだ安価な電子キーボードも存在せず、高価なピアノやエレクトーンを買える経済状況ではありませんでした。選択肢はなく、¥36,000のエレキを買うことから始まりました。

当時はまだアナログ・レコードの時代でした。アマチュアがレコードを作ることは金銭的に難しく、オリジナル曲を配布する媒体はカセット・テープしかありませんでした。また、録音のためのマルチ・トラック・レコーダー(MTR)、ミキサー、エフェクターも主流はプロ用のアナログ機器で何百万円以上もする物ばかりで、それらを買うことは不可能でした。

そんな時代だったので、アマチュアがそれなりのクオリティーでオリジナル曲を音源にするためには、録音設備があるスタジオでバンドの演奏を録ってもらい、カセット・テープの完成品まで仕上げてもらうしかありませんでした。プロ用の機材も高価な時代だったので、頼むと1~2曲でも10万円以上はかかったと思います。自力でやろうとしたら練習スタジオにラジカセを持ちこんで一発録りしかありませんでした。現在のようにデジタル録音ではないのでとても音質が悪く、ボーカルが聴き取れるかも怪しい音ですが、多くのアマチュアのデモテープは、それが普通でした。

自宅での録音は、オープンリールのテープを用いたアナログのMTRはありましたが、こちらも100万円以上はしましたし、ミキサーやエフェクターも揃えることを考えると自宅で機材を揃えることは不可能でした。なので、自宅で一人でやろうとすると、ラジカセでのギターの弾き語りの一発録りぐらいしかありません。

このような状況でしたが、MTRやミキサーなど、いずれも100万円の壁を切り始めて、徐々に自宅録音が見えてきた時代でもありました。とは言うものの一般庶民の大学1年生の自分に、そのような機材を買えるわけもなく、でも作りたいという情熱(欲望)は抑えきれず、無い知恵を絞って曲作りを始めることになります。

では、次回からそのお話が始まります。

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目次(随時、追加していきます)
宅録史1:家であるもので曲を録音しろ
宅録史2:ドラムの法則をさがせ


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ハーモニーの歴史15 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。長らく続いたこのシリーズ、今回で最終回です。

  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史14
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第15回:崩壊?創造?(テンション編3)

15_Tristan und Isolde
R. ワーグナーのトリスタンとイゾルデの冒頭
青枠部は通称“トリスタン和音”
ハーモニーの崩壊を導いた有名な響き
無理やりコード名をつけてみましたが、、、

前回は、テンション・コードを多用した場合の制約を説明しました。テンションの華やかな響きを得る代償として、コード進行がワンパターン化しやすいと言うことです。ただし、19世紀の終わり頃、時代がもう少し進むとテンション・コードは、これらの制約を乗り越えると共に、調性と言うヨーロッパ音楽の基幹をも破壊することになります。

そのもう一つの立役者は変化和音です。変化和音とテンション・コードは分けて考えるべきと説明しましたが、当時の作曲家は、その境をあえて曖昧にする事により、新しい和音(もしくは調性の崩壊)を作り出しました。例えば、7th音にシャープやフラットを付け、これを、一次的な不協和音として使うのではなく、和音の主役として使用します。これにより、トニックへ進むべき本来のドミナント・モーションの機能が曖昧になります。

同様にテンション音にシャープやフラットをつけて音程を変化させると、本来の調(キー)のコードではなく他の調性のコードに聞えてきます。つまり、一つのコードに復数の調性が現れます。特に、トニック(ベース音)を削除すると、ほとんど本来の調性が分からなくなります。よって、本来の調で進んでいるハーモニーの上で、別の調性のハーモニーが入れ代り立ち代り現れることになり、要のドミナント・モーションが消えていきます。これにより、ドミナント・モーションの制約から解放されて、あらゆる音を使う事が出来ます。よって、(うまくいけば)多彩な響きが可能になります。

さらに進むと3度音の積み重ねも突き崩すことが可能です。13thのコードに変化和音を用いると、結果として、1オクターブ内にあるすべての音(白鍵、黒鍵すべてを含む12音)を使う事ができます。つまり、コードの音の選び方に制約がなくなってしまいます。その中から適当な音だけを選んでいけば、長短を含めた2度の音程を重ねる事も選択できます。これを進めると、3度音程のないハーモニーが出現します。特に、全音音階を併用すると復調を超えて無調をも得る事が出来ます。

テンション・コードは、不協和音に近いものです。それを違和感なくコード進行の中に入れこむのが、ドミナント・モーションの力です。変化和音により、あえてその後ろ盾を外すことにより、限りなく大きな自由を得たと言えるでしょう。ここまで来ると、調性の崩壊につながります。すべての音を自由に使えるということは、すばらしい可能性を得ると同時に、何も規則がない事を意味します。

ヨーロッパの音楽は、調性と言う規則の元にハーモニー、そして音楽そのものを発展させてきました。しかし、ハーモニーを発展させる為に、自らその規則を取り崩してきたと言えます。その結果として、終焉を迎えることになりました。


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ハーモニーの歴史14 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史13
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第14回:多彩な響き?ワンパターン?(テンション編2)

14_Liebestraum
リストのピアノ曲、愛の夢 第3番
テンション・コードの美しくモダンな響き
定石的なセカンダリー・ドミナント・モーション
いわゆる、Ⅱ-Ⅴによる進行が聞かれます

不協和音的に単発でテンション・コードを使いインパクトを得ることは、テンション・コードの概念が生まれる以前から聞かれます。しかし、それを複数つなげて、かつ、綺麗に響かせるのは難しい事です。変化和音とは異なる、そのような、機能的なテンション・コードの使い方は、19世紀も半ばになってから生まれました。今でも、ジャズやそれに影響を受けた音楽では、多くのテンション・コードの連結が聞かれます。それは、どのような仕組みになっているのでしょうか。

以前、テンション・コードは、7thコードと同類だと言う事を説明しました。通常のテンション・コードは、必ず、7th音を含むとともに、コード進行では7thコードと同じ機能を持っている訳です。その機能とはドミナント7thと呼ばれる「ソ、シ、レ、ファ」の7thコードが、トニックと呼ばれる「ド、ミ、ソ」へ進む力、つまり、ドミナント・モーションと呼ばれるコード進行の推進力です。

これにより、テンション・コードは7thコードと同様に、強力なコードの推進力を持っているわけですが、それをつなげて行こうとすると、困った問題が現れます。つまり、ドミナント7thのコードの次は、必ずトニックあるいはそれと同機能の「落ち着いたコード」に進みます。つまり、テンションのないコードに進もうとしてしまうわけです。テンション・コードを複数つなげていくのが難しいのは、これが主な理由です。

そこで、これを回避する技が、一つあります。それは、次から次とドミナント・モーションが来るように、コード進行にある錯覚を入れ込むことです。例えば、「ソ、シ、レ、ファ」の前に「レ、ファ#、ラ、ド」を置きます。この二つは、調(キー)がト長調(Gメジャー)だとすると、単にト長調のドミナント・モーションと解釈できます。つまり、ドミナント・モーションを一時的に他の調へ当てはめることにより、順次、ドミナント・モーションをつなげることが出来ます。これは、セカンダリー・ドミナント・モーションと呼ばれるテクニックです。

セカンダリー・ドミナント・モーションを多用すると、ドミナント・モーションの連続、つまりは7thやテンション・コードの連続を使うことが出来ます。ただし、それによる危険もたくさんあります。例えば、上記の例のように、本来の音階から外れたシャープやフラットがついた音がたくさん出てきます。これにより、メロディーとの兼ね合いが難しくなります。歌ものであれば、音程が取りづらくなります。ただ、これは、演奏の技量により何とかなるものではあります。

そして、もう一つは、コード進行そのもののバリエーションです。セカンダリー・ドミナント・モーションは、ある意味、ワン・パターンです。いわゆる「Ⅱ-Ⅴ(ツー・ファイブ)」と呼ばれるコード進行の繰り返しです。実際の曲では、いろいろなコードの置き換えが行なわれるとは言うものの、定型的な感じはいなめません。つまり、テンション・コードにより個々のコードは複雑になるものの、コードの進行は簡素になります。一時的にいろいろな調への移り変わりはあるにせよ、ドミナント・モーションと言う土台から逃れなれなくなるのです。このワンパターン化は、ジャズなどの即興演奏が主となる曲では、良いのかもしれませんが、作曲としては、型にはまったものになりやすく、テンション・コードの落とし穴と言えます。

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ハーモニーの歴史13 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。

  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史12
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第13回:協和? 不協和?(テンション編1)

13_Alterd & tension code
上段:変化和音とテンション・コード
7th音である♭Bの有無が違い
下段:各コードの動き
変化和音は変化前のコードにしか戻れない

今回からは、テンション・コードのお話です。3度の音を積み重ねることによって発展した西洋音楽ですが、その発展の原動力であると同時に破壊への道筋を作ったものがテンション・コードです。我々にとっても、コードを学び始めるとテンション・コードは、挫折への第1歩。恐ろしい(?)存在です。まずは、テンション・コードと不協和音の違いを考えましょう。

以前、テンション・コードは、7thコードにさらに3度音程の音を積み上げていくこと、それは13thで打ち止めになることを説明しました。ここで重要なのは、テンション・コードには、常に7th音(Cコードだとシ♭音)が含まれると言う事です。もちろん、実際の演奏では、(演奏で指が届かないなどの諸事情で)省略される場合も多々ありますが、基本は、7th音あってのテンション・コードと言えます。逆に、7th音があってはならない場合(入れると意図した響きから外れる場合)は、テンションと考えずに「変化和音」と考えます。例えば、Cのコードに「ファ」(11th音)を入れる場合は、次のように音を積上げます。

基本のコード : ド ミ ソ
変化和音(ミがファに変化) Csus4 : ド ファ ソ
テンション・コード C11  : ド ミ ソ シ♭ ファ 

つまり、本来の3th音である「ミ」が4th(=11th音)の「ファ」に変化したわけです。このような変化和音は、コーラスなどのハーモニーで、あるパートのメロディーが前後の音の流れから「ファ」にならざるを得なかった場合などに現れます。以前、説明した協和と不協和のくり返しによるハーモニーのリズムを考えると、コーラスやストリングスの実際の曲では、協和なコードとコードの間に変化和音が多く現れることが多くなります。

変化和音は、不協和音です。あくまでも(仕方なく)一時的に現れたものと考えて、すぐに本来のコードに戻るのが原則です。上記で言えば「ド ミ ソ」のコードに戻ります。よって、他のコードへ進めないために、コードを進行させる力は、たいへん弱いと言うことが言えます。テンション・コードが7thの後ろ盾を持って、ダイナミックにコードを進行させていくのとは、大きな違いがあります。

以上が、協和音であるテンション・コードとそれ以外の不協和音(=変化和音)の違いを説明する原則になります。テンション・コードを7thコード、特にドミナント7thと同じものと考えるようになって、テンション・コードが自由に使う事が出来るようになりました。

ただし、実際の曲では、意図的に本来のコードに戻らずに変化和音を使用する場合も多くあり、美しく響く変化和音もあります。よって、テンションかどうかは判断の難しいところもあります。ただし、最初に説明したように、基本は、7th音のあって良いかどうかが分かれ目だと言うことです。


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ハーモニーの歴史12 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史11
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第12回: 究極のポリフォニー(ポリフォニー編3)
 
12_Das Wohltemperirte Clavier 
J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集
第1巻 第1番 ハ長調からフーガ
鍵盤1台で奏でる4声のフーガ
順番に現れる主題を彩る多彩なハーモニーがとても美しい

カノンはポリフォニー音楽のかなめであり、各声部がバラバラになりがちなポリフォーニーに統一感を持たせる為の重要な形式だと言えます。そして、ポリフォニーを象徴するもう一つの形式、そして究極のポリフォニーが「フーガ」です。

フーガは各声部が同一のメロディーを演奏する点では、カノンと近いものがあります。通常の形式では、まず最初の声部が単独でメロディーを演奏します。カノンと異なり、たいていの場合は、数小節の短いメロディーで完結します。そして、最初の声部のメロディーが終わると同時に、2番目の声部が同じメロディーの演奏を始めます。ただし、ここでキー(調)は、5度上等に移調されます。その間、最初の声部も休むことなく演奏しますが、メロディーは自由に動きます。アドリブ的に多彩なメロディーを演奏しながら2番目のメロディーにハーモニーをつけることになります。

同じように、3番目、4番目の声部が入ってきます(声部の数は、曲により2~6ぐらいまであります)。各声部は、順番に同じメロディーを演奏しますがそれぞれキーが異なり、また、他の声部が演奏しているときは、全く異なるメロディーを演奏することになります。そして、全部の声部が終わると間奏が入ります。間奏は、複雑なハーモニー処理で最初の調(キー)から大きく逸脱した演奏をもとの調に戻るために必要となります。編曲としては、カノンの手法を用いたり即興演奏となったり、多彩かつ高度なものが多く聞かれます。その後、また、いづれかの声部が最初のメロディーを演奏して2順目の演奏が始まります。何順するかは、曲によりいろいろです。

カノンとの一番の違いは、各声部のメロディーが重ならない為、今どこの声部がメロディーを演奏しているか聞き取りやすいことです。また、各声部が自由に動けるため作曲的にも演奏的にも高度なものが求められます。同一のメロディーを用いながら、毎回異なるハーモニーの処理や転調等が行なわれます。

ポリフォニーとして高度な技法であるフーガですが、バッハをピークとして急速に消滅していきます。その後はベートーベンで少し聴かれるぐらいです。曲の進行において形式が厳格であるがゆえに、古臭くなってしまったのかもしれません。ただし、各声部で同じメロディーを繰り替えすと言う最小限の決まり事の中で、無限のハーモニーを即興的な演奏の中で生み出すフーガの技法は、究極のハーモニーと言う事が出来ます。

フーガに限らずポリフォニー音楽は、バロック時代が全盛期で、バッハをもって完成し同時に終焉を迎えました。ただし、形式としては過去のものとなりましたが、現代のホモホニーのハーモニーにおいても、各部分を見ていくとこれらの要素がたくさん見うけられます。ポリフォニーの基礎があって始めて、ホモホニーが理解できると言えます。


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ハーモニーの歴史11 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史10
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第11回:みんなで重ねれば(ポリフォニー編2)
 
11_Musical offering No3 canon
J.S.バッハの音楽の捧げ物から逆行カノン
(原譜はソプラノ記号だがト音記号で記譜)
楽譜は1声だが実際は2声のカノン
最後にある逆さまになったト音記号がミソ
もう一人は楽譜を上下逆に読んで曲の最後から逆行して演奏する

前回は、コーラスなどの各声部の流れからコードでは説明できないハーモニーの多彩さを説明しました。例えば、コード進行で表現すれば単純なストリングスの演奏でも、実際にクラシック等で聞かれる演奏は多彩な響きを持っています。逆に、いくら綺麗なストリングスの音色を使っても、シンセサイザーの鍵盤でコードをなぞっていくだけでは、これらのまねはできません。そして、さらに各声部のメロディーを突き詰めていくとポリフォニーを避けて通れなくなります。

以前、説明したように、ポリフォニーは各声部が別々のメロディーを歌いかつ全体としてハーモニーとしての調和も取れた形式を言います。現代の音楽では完全なポリフォニーの曲を作ることはまれで、部分的な味付けとなる場合が多いでしょう。しかし、概念を説明するために、完全なポリフォニーの曲の形式を説明しましょう。

ポリフォニーの形式はたくさんあります。形式に捕らわれずに1曲を通して各声部がまったく違うメロディーを歌うことも出来ますが、それでは規則も何もなく説明しようありませんし、聴く立場からみても、それぞれのメロディーを聞き取る事は不可能です。そこで、もっとも一般的な「カノン」形式を説明しましょう。

カノンの基本は、同じメロディーを各声部がワンテンポずらして歌うことです。簡単な例では、「かえるの歌」はカノンそのものです。各声部が、何小節かづつずれて同じメロディーを歌い出すと、それがきれいなハーモニーになるように、あらかじめメロディーに細工がしてあるわけです。どの声部も主役でありながら相手にハーモニーをつけてあげるわけです。ソプラノが主役でそれ以外は脇役であるホモホニーとは異なり、主従関係のないハーモニーの世界です。

「かえるの歌」は単純な例ですが、実際にもっと複雑で長いメロディーになってくると、とたんに作曲が難しくなってきます。すべてが同じメロディーを歌っているわけですから、不協和音を除く為に一つの声部のメロディーを変えると、他のすべてのメロディーも変り、また別の箇所で不協和音が発生します。あちらを立てればこちらが立たずです。そこで、ある声部の一部だけメロディーを変えてしまって処理することも出来ますが、これは各声部に主従関係が生まれてしまいます。逆に、すべての声部が完全に同じメロディーとなっている曲は、「厳格」なカノンとされ、ある意味、数学的な精巧さがあります。そして、なによりすべての声部が主役で演奏が楽しい曲になります。

カノンには、さらに多くの種類があります。最初のメロディーをそのままなぞるのではなく、逆から演奏するもの(2番目の声部は、最初の声部のメロディーを楽譜の後ろから演奏する)、音程が逆になっているもの(音符を上下逆にする)、音程が異なるもの(音符を上下に平行移動)テンポが倍になったり半分になるものなどなどです。一見、遊びのような手法ですが、各声部の音程やテンポが異なるのでハーモニーも刻々と変り、作曲には高度なテクニックが求められます。これらの手法で「厳格」なカノンを作るのは至難の技でしょう。


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ハーモニーの歴史10 [連載読み物]

成り立ちの歴史からハーモニーをやんわりと解説するシリーズの続きです。
 
  前回のお話はこちら → ハーモニーの歴史9
 1回目のお話はこちら → ハーモニーの歴史1

第10回:コードにはないもの(ポリフォニー編1)
 
10_Suiten Ⅲ Air
J.S.バッハの管弦楽組曲から第3番のアリア
G線上のアリアとして有名
4つの異なるメロディーが重なり
コードでは表せない美しいハーモニーを作る

しばらくの間、話を簡略化するためにコードの話が続きました。今回は、基本に戻ってハーモニーのお話です。記号化できるコードと違って、ハーモニーそのものは、楽譜を見ながら音を聞かなければ理解が難しいものです。よって、文字で説明するとどうしても抽象的になってしまいますのでご了承下さい。

ハーモニーそのものには、各声部のメロディーの流れや、楽器(あるいは声)などの音質の対比、演奏上の表現、楽器の数など多くの要素が絡んでくる事を最初に説明しました。その中で、もっとも基本となるのは、各声部のメロディーの流れでしょう。

通常、ギターやピアノなどで一人でコードを弾くと、弾いている音はすべてコードの構成音です。大方の場合、それぞれのコードは、弦や鍵盤の押さえ方の「型」があり、それらを複数つなげていくことによって演奏が成り立ちます。よって、ある程度決まったパターンでの演奏となると同時に、そこにコードの構成音以外の不協和音は存在しません。それらのコードとコードのつながりは、コード進行としてのつながりはありますが、コードを構成しているそれぞれの音、つまり各声部の滑らかなつながりはありません。

逆に、コーラスや弦楽曲などでは、各声部(コーラスでは、ソプラノ、アルト、テノール、バスです)は、それぞれ独立したメロディーを歌っています。メインのメロディー(主旋律)は、一番上のパート(ソプラノ)ですが、他のパートもただコードの構成音のみを歌っているわけではなく、独自に滑らかなメロディーを歌っています。通常、聴衆には聞き取れないかもしれませんが、それらのメロディーは、ハーモニーを形作る上で重要な働きをします。そして、時にはメインのメロディーの隙間を縫って、新たなメロディーを聞かせて自己主張する場合もあります。

ここで重要なのは、各声部が主旋律と平行に動いているわけではなく、異なるメロディーを奏でていることです。例えば、主旋律の音程が上に行ったら他の声部は下へ行く、主旋律が音を伸ばしているところで他の声部は細かい動きで音程を変えるなどです。各声部間の音程とリズムの関係が常に動いているわけです。結果として、そこにはコード以外の多く音、つまり不協和音が入ってきます。コードと言う概念のみだと、「1小節の間ずっと同じコード」と考える場合も、ハーモニーとして考えると、「どこかの声部の音程が変る毎に細かくコードが変る」と考えます。これにより、単純にピアノやギターでコードをリズムにのせて演奏する場合と異なり、緊張感のある多彩な響きが生まれるわけです。

これらの不協和音は協和な音程の間に経過的に生まれるものです。通常、リズムの強拍では協和に、弱拍では不協和になるようにハーモニーをつけます。テンション・コードのように常に含まれるものではありません。逆に言うと、ハーモニーの協和、不協和の繰り返しによってリズムが形作られます。明確なリズム楽器を持たないオーケストラなどがダイナミックなリズムを奏でる事が出来る理由は、ハーモニーにもあるのです。


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